トラ吉覚さん、ご新規のお客様から「縮毛矯正とカラーを同時にお願いしたい」と予約が入ったら、普通は喜んで受けますよね?
断る理由があるんですか?



嬉しい予約ですし、売上にもなります。
ただ、ルコールでは、ご新規のお客様の縮毛矯正とカラーの同日施術は、原則としてお受けしていません。
理由は、売上より先に、お客様の髪の安全を優先したいからなんです。



今回は、2026年9月29日に実際に入った、ご新規のお客様からの縮毛矯正とカラー同時施術のご予約について、覚さんがどう判断したかを整理した記事ですね。
2026年9月29日、ご新規のお客様から、縮毛矯正とカラーの同時施術を希望する予約の問い合わせがありました。問い合わせ自体はありがたいものです。ただ、ルコールでは、ご新規のお客様に対する縮毛矯正とカラーの同日施術は、原則としてお受けしない方向で動いています。
この判断は、オーナー個人の好みや、「忙しいから断る」といった事情ではありません。初めてのお客様の髪に、情報が十分に揃わない状態で、負担の大きい薬剤施術を同日に2つ重ねることが、長期的に見てお客様のためにならないと考えているからです。
予約が入ることはありがたいです。でも、初めて触る髪の履歴が分からない状態で、売上を優先して無理な施術をすることは、お客様にもお店にも良くないと考えています。
なぜ、同日施術を原則お受けしていないか
まず、ルコールが「ご新規のお客様の縮毛矯正とカラーの同日施術」を、原則お受けしない方向にしている理由を整理します。
初回で把握しきれない情報が多い
初めて来てくださるお客様の場合、
- これまで、どのような薬剤で施術してきたか
- 髪のダメージが、どの位置に、どの程度あるか
- 以前の縮毛矯正・カラーの履歴
- 生まれつきの髪質とクセ
- 現在の髪の内部の状態
これらの情報が、こちらで完全には把握できていません。もちろん、カウンセリングで丁寧にヒアリングはします。それでも、お客様ご自身が覚えていない過去の履歴や、過去に使われた薬剤の違いまでは、言葉だけでは追い切れないのが実際のところです。
縮毛矯正とカラーを同日に行うと、負担が大きくなりやすい
縮毛矯正(クセを薬剤と熱でまっすぐに伸ばす施術)と、カラーは、どちらも髪にとっては負担の大きい施術です。それぞれ単独でも、髪の内部に手を加えることになります。
そのうえで、
- 縮毛矯正の薬剤でダメージを受けた髪に、同じ日にカラー剤を乗せる
- どちらも髪の内部に働きかける施術のため、ダメージが重なりやすい
- 仕上がりの読み幅も、他の履歴が分からない分、広くなる
という点で、同日に行うと、お客様の髪への負担が大きくなりやすいという判断になります。
長年担当してきているお客様であれば、過去の履歴や髪の反応を見ながら、同日施術ができる場合もあります。ただ、初回のお客様で、しかもその日が最初の施術という状況で、負担の大きい施術を2つ重ねるのは、やはり避けたいというのが、お店としての今の考えです。



確かに、普段担当している自分のお客様なら、同日もありえますよね。
「初回だから慎重に」という線引きなんですね。



そうなんです。
初回は、情報が揃っていない状態で、お客様の髪を預かるタイミングです。
そこで無理をすると、仕上がりに影響するだけでなく、次の施術以降にもダメージが残る可能性があります。
目先の売上より、長く通っていただける髪を守りたい、という感覚が近いかもしれません。
「断ったから正解」という話にはしたくない
ここまで書くと、「断ったから正解」「売上を断る勇気を持て」というトーンの話に聞こえてしまうかもしれません。ただ、今回の記事では、そう書きたくありません。
断ること自体が目的ではない
お店としては、来てくださるお客様の予約は、できる限りお受けしたい、という気持ちがあります。断ること自体が目的ではなく、お客様の髪の状態を長期的に守るための判断として、同日施術を見送ることがある、というだけです。
そのため、「ご希望に添えません」で終わらせるのではなく、
- 別日に分ける案
- その日は髪の状態を見ながら、優先する施術を提案する案
- 安全を担保できない場合は、無理に施術をお受けしない案
という、いくつかの代替案を用意するところまでをセットにしています。
売上を取りたい気持ちはあっていい
私自身、売上がほしい気持ちはあります。これは隠しても仕方ありません。
特に、新しいスタッフさんが入ったばかりの時期や、新規のお客様がまだ少ない時期は、どうしても目先の売上に目が向きます。それでも、初回のお客様に無理な施術をして、結果的に髪のコンディションが悪くなり、2回目に来ていただけない方が、長期的な売上としては大きなマイナスになります。
この辺りは、以前書いた問題が起きない店を作るのは難しい。でも、同じ問題が起きにくい店にはできる。で触れた「同じ問題が起きにくい店」の考え方と、同じ方向を向いていると思います。
代替案を、必ず用意する
今回のお客様についても、「同日施術はお受けできません」で終わらせない形を意識しました。
① 別日に分ける
一つ目の代替案は、別日に分ける案です。
先に縮毛矯正だけを行い、
- 縮毛矯正で、髪の状態と反応を確認する
- カラーは、別日に、縮毛矯正後の髪の状態を見てから提案する
- 必要であれば、ダメージを抑えた薬剤や施術内容を再度組み立て直す
という流れです。これは、お店側がただ「分けてほしい」と言うのではなく、別日にすることで、お客様の髪に何が起きるか、どういうメリットがあるかを、ちゃんと説明するところまでをセットにします。
② 髪の状態を見て、優先する施術を提案
二つ目は、ご来店当日に髪の状態を見て、優先すべき施術を提案する案です。
たとえば、
- クセがとても気になっていて、カラーの色味は普段と大きく変えない希望の場合
- 逆に、カラーで印象を大きく変えたい時期で、縮毛矯正は次回でも問題ない場合
こうしたお客様のご希望によって、どちらを優先するかが変わってきます。カウンセリングで、お客様が「本当に実現したい状態」を聞き取ったうえで、優先する施術を提案します。
③ 安全を担保できないときは、お受けしない
三つ目は、安全を担保できないときは、無理にお受けしない、という選択肢です。
これは、たとえば髪のダメージが大きく、過去の薬剤の履歴も読み切れない、という状況のときです。プロとして見て「この髪にこの施術を同日に重ねるのはリスクが大きい」と判断した場合は、無理にお受けしないことも、お客様の髪を守るための選択だと考えています。
ただ、この「お受けしない」は、お客様を遠ざけたい話ではありません。別日に分ければできる、あるいは、別のメニューであれば今日のうちに可能、など、できる限り、お客様がこの日ご来店することに意味がある形を提案したいと思っています。
【ルコールの、ご新規縮毛矯正+カラー同日施術に関する考え方】
◆原則
・ご新規のお客様の同日施術は、原則としてお受けしない
・判断は、スタッフさん個人の感覚ではなく、お店のルールとして持つ
◆代替案
・別日に分けて、縮毛矯正→後日カラーの順で行う
・当日は、髪の状態を見て、優先するメニューを提案する
・安全を担保できない場合は、無理にお受けしない
◆お客様への伝え方
・「ルールだから」ではなく、「お客様の髪のため」として説明する
・「できない」で終わらせず、「こうすればできる」を必ずセットで伝える



断るというより、「別の形を提案する」のが先ですね。



そうなんです。
「できません」で終わると、お客様はただ拒絶されたと感じてしまうかもしれません。
そうではなく、「今日は別の形にする、または日を分ければできる」と伝えることで、お客様自身も選べる状態になります。
文章にして残す。感覚だけで判断しない
今回、同時にやったことがあります。それは、お客様へ返信する文章と、スタッフさん同士で共有できるルールの土台を、文章として残しておくことでした。
お客様への説明文を、丁寧に作る
まず、お客様に送る返信文を、丁寧に作ることにしました。意識したのは、
- 施術を断る理由を、お客様の髪のために、と伝える
- 代替案を具体的に書く
- 「できない」で終わらせず、「こうすればできる」も入れる
- 来店自体を遠ざけるような言い方にしない
という点です。
短い文章でも、言葉の選び方で、お客様の受け取り方は変わります。「ルールだからできません」ではなく、「お客様の髪を長く扱っていくために、こうさせていただいています」というトーンに揃えるようにしました。
感覚ではなく、判断基準として残す
もう一つは、今回の判断を、オーナー個人の感覚で終わらせず、お店の判断基準として残しておく、という方向です。
これは、スタッフさん個人の感覚で判断していると、人によって受け付けたり断ったりがばらついてしまい、スタッフさん自身も判断に迷う時間が増えてしまうからです。
「ご新規のお客様の縮毛矯正+カラーの同日施術は、原則お受けしない。代替案はこの3つ」というところまでを、文章として共有しておけば、スタッフさんも、迷ったときに判断の軸として戻れます。
この辺りは、以前書いた在庫表を作ることが目的じゃない。「本当の材料原価率」を2週間測ってみるでも書いた「感覚で管理していたものを、見える形にする」という流れと、どこかでつながっています。
「売上を断る勇気」という煽り方はしない
今回の判断を、記事として外に出すとき、「売上を断る勇気を持とう」という煽り方はしたくないと思っています。
「勇気」ではなく「判断基準」
売上になる予約を見送るのは、勇気というより、判断基準の問題です。
判断基準があるからこそ、売上を取りに行くときと、見送るときを、同じ軸で選べます。感覚だけで動いていると、売上がほしい時期には受けて、余裕があるときには断る、ということになりかねません。
これだと、お客様の髪にとっても、スタッフさんにとっても、「ルールが見えない店」になってしまいます。
大事なのは、お客様の髪を長く扱えること
最後に大事にしたいのは、その施術をお受けすることで、お客様の髪を長く扱える関係が続くかどうか、という視点です。
初回で売上を取りに行って、2回目に来ていただけない関係より、初回は少し踏みとどまって、2回目以降に深く関われる関係の方が、お店としても、お客様としても、良いことが多いと感じています。
以前の記事6年担当したお客様を失った朝、少し神頼みをして神社へ行ったでも感じたことですが、お客様との関係は、1回の施術ではなく、長い時間の積み重ねで作られるものだと思います。



「勇気」より「判断基準」。
これは、少し気持ちが楽になります。
勇気を出すのは、毎回しんどいですからね。



そうなんです。
毎回「勇気を出して断る」のは、人としても疲れます。
でも、先に判断基準が決まっていれば、断ることが「勇気」ではなく「判断」になります。
この違いは、意外と大きい気がしています。
未来の自分への経営メモ
【未来の自分への経営メモ】
・売上になるから施術する、にしない
・新規のお客様ほど、履歴の確認を慎重にする
・できない理由だけでなく、代替案を必ず出す
・スタッフさん個人の感覚ではなく、お店の判断基準にする
・安全を優先した判断を、お客様へ説明できるようにする
・断ることを「勇気」で終わらせない
・初回で売上を取りに行って、2回目を失わない
・ルールを文章として残す
・ルールだからではなく、お客様の髪のためだと伝える
・判断基準があれば、スタッフさんも迷わない
まとめ ─ 売上の前に、お客様の髪を長く扱える関係があるか
今回、ご新規のお客様からの縮毛矯正とカラー同日施術のご予約について、お店として下した判断は、「原則としてお受けしない」というものでした。
これは、お客様をお断りすることが目的ではありません。初回の情報が揃っていない状態で、負担の大きい施術を同日に重ねることが、お客様の髪のためにならないと考えたうえでの判断です。
そのために、
- 別日に分ける案を用意する
- 当日、優先する施術を提案する案を用意する
- どうしても安全を担保できないときは、無理にお受けしない
- お客様への説明文を、丁寧に作る
- スタッフさんも判断に迷わないよう、お店のルールとして文章に残す
というところまでを、セットで動かしています。
売上を取りに行くことより先に、お客様の髪を長く扱える関係があるかを見る。これが、ルコールが大事にしていきたい判断基準です。



「断る」ではなく、「別の形を一緒に探す」という感じですね。



そうですね。
断ることが目的になった瞬間に、お店とお客様の関係はぎこちなくなります。
別日に分ける、優先する施術を変える、代替メニューを提案する。
選択肢を一緒に探せる店でありたい、というのが今の気持ちです。
